HIV感染不安のある方へ ~分かっちゃいるけど…~(長文/後編)
こんばんは、たまです。
前回は、HIV検査にトライするための「あと一歩」を踏み出すための一助になり得るエッセンスのうち、
「1.検査を受けることのデメリットについて分析してみる」について考えてみました。
今回はその続きに進みたいと思います。長文、お付き合いください。
2.自発的な検査によって「HIV感染の事実を知ること」の意義を考えてみる
意外と認識が薄れやすい部分かもしれませんが、検査を受けようかどうか考えている時点において
HIVに「感染していない」か「感染している」かは、既に潜在的な事実として存在しています。
検査は、それを目に見える形にして確定させる作業です。
検査を受けることで初めてそのどちらかに振れるわけではありません。
また、仮に「感染している」としても、検査を受けないことでその事実が消えることはありません。
これを前提に、自発的な検査によって「HIV感染の事実を知ること」の意義を考えてみたいと思います。
まず、事実として「感染していない」状態であれば、検査を受けることでその事実が確定します。
(ただしウィンドウピリオド(=検査結果が正確に出ない感染直後の一定期間)にはご留意ください。)
感染不安からある程度脱却できることになるし、今後の自身の行動の見直しを図るきっかけにもなるため、
検査を受けることは結果としてプラスにしかならないでしょう。
一方で、「感染している」状態であった場合にはどうでしょう。
自発的な検査によって「HIV感染の事実を知ること」は自身にとってどのような意義があるのか。
事実として、「HIV感染の事実を知ること」は大変残酷なことです。
これは否定することができないでしょう。
可能な限り、HIVに向き合うことなく生活することができるのであれば、
それに越したことはありません。
しかしながら、HIV感染症は(一部の特殊な症例を除いて)時々刻々と身体を蝕んでいくものなので、
事実として既に「感染している」のであれば、
「自発的に検査を受けに行かなくても、いつかはその事実を不意に突きつけられる」
(そしてその時点では様々な状況が今より相当程度悪くなってくる)
ということも念頭に置いておく必要があります。
僕の場合は、感染が判明する1年数か月ほど前に検査を行い、陰性の診断を受けています。
(それ以前は数か月に1回のペースで検査を受けていたのですが、カクカクシカジカで間を開けてしまいました。)
しかし、その1年数か月後の検査で、陽性の診断を受けました。
そして感染が発覚した時には、既にかなり免疫力が低下してしまっていたのです。
(免疫力の指標である「CD4」が約350程度=現在のHIV治療方針では明らかに投薬を開始すべきレベル。)
従来、平均的な「HIV感染からAIDS発症までの期間」は約10年程度と言われてきましたが、
その期間が最近では年を追うごとに短くなっており、2~3年でAIDSを発症してしまう症例もあるようです。
(感染したウィルスのタイプや個々人の免疫機能によっても異なるようですが、原因はまだはっきりとは判明していないようです。)
僕の場合はまさにこのトレンドに当てはまっていたようで、もう少し検査を先延ばしにしていたら、いわゆる
「いきなりAIDS」
(=感染者本人がHIV感染の事実を知らない状態で、相当程度免疫力が低下しないと発症しないAIDSと認定されるための指標たる疾患を発症してしまうパターン)
になってしまった可能性が高かったと思います。
そして「いきなりAIDS」となっていた場合には、
免疫力がかなり低下した状態でのAIDS指標疾患自体の治療の困難さやその副作用もさることながら、
HIV治療の投薬をすぐに始められなかったり投薬開始後もその効果も上手く現れなかったり、
さらには自身の意図しない関係者へ感染事実を告知せざるを得なくなったり突然の非自発的失業を招いたり、
という大変な困難に直面していたでしょう。
まとめると、
事実として「感染している」場合においては、
現時点で自発的に検査を受けなくとも、いずれ「感染している」事実を突きつけられることになる
(そして、その猶予期間は平均としてどんどん短くなっているし、発覚した際の状況は相当程度悪化した状態になってくる)
ということであれば、
長期スパンで見た際には、確かに残酷なことではあるけれども、
一刻も早くその事実を受け止めておける方が有益
だということです。
すなわち、自発的な検査によって「HIV感染の事実を知ること」は、
その瞬間の(またはその後の短期的な)残酷さを上回るだけの長期的な実利的メリットに富んでいるということです。
AIDSに至る前に自発的に感染を知ることができれば、
感染や治療に関わる今後の様々な選択肢について、自身の思うようにコントロールすることができる可能性が飛躍的に高まる
のです。
HIVの場合のこのような実利的メリットは、
ガンなど、発覚=入院(+治療)となってしまいやすい
他の一般的な疾病の場合に比べて、際立った特徴であると考えられます。
HIV感染は、早期発見された場合には、今までの日常生活を大きく変えることなく
今後のことを考え、それに基づき動いていくことができる余地が大きいのです。
3.検査を受けることは他者を救うことでもある
仮にHIVに感染している場合にそれを自分自身が知ることは、
自身のためだけでなく、大切な人や周囲の人(そして場合によってはこれから生まれてくる命)を救うことにもなり得ます。
すなわち、感染を可能な限り早期に知ることで、
そして場合によっては早期に投薬治療を開始することで、
知らぬ間に自身から他の人に感染させてしまうことを未然に防ぐことができます。
更に、仮に感染状態かつウィルス量がコントロールされていない状態であなたと
性的関係を持ってしまった人に対し、検査を促し、感染の早期発見・治療のきっかけを創出する
ことにもつながり得るということです。
現にHIVに感染してしまう人の多くは、
「HIV感染を認識していない感染者」に感染させられてしまっていると考えられます。
そのため、感染している側も、感染させられた側も、
感染の事実に気づくタイミングが遅れてしまい、
場合によっては「いきなりAIDS」に至ってしまうことも事実として多いのだと思います。
こうした負の連鎖を断ち切るためにも、
ひとりひとりの「あなた」が検査を受けることはとても大切なことです。
以上、「あと一歩」を踏み出すためのエッセンスについて長々と考えてきましたが、
大切な人や見知らぬ誰かのため、そして何より自分自身のためにも、
「今」検査を受けることが肝心です。
感染していることを大前提としたこともたくさん書いてしまいましたが、
先の通り、HIVは決して感染しやすいウィルスではありません。
自分自身を必要以上に不安に追い込むことなく検査に挑んでもらえればと思います。
晴れて「陰性」が確定した際には、再度同じ不安にさいなまれることがないよう、
然るべき対策を心がけるきっかけにしてもらえれば嬉しいです(←ここが一番大切です!)。
そして万が一「陽性」であったとしても、多くの方にとって、まだ今なら
あなたらしさを失わずに生活していく可能性が十分に残されています。
そして、どうしても不安なことがあれば、僕でよければ(残念ながら感染可能性の診断等をすることは難しいですが)お気軽にご相談ください。
微力ながら、皆さんの「あと一歩」を応援しています。
大変な長文、最後まで読んでくださってありがとうございました。
皆さんにとって、今日1日が素敵な1日になりますように。
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